U邸Ⅱ/2017年
30年間愛され、住み続けてこられたUさん宅を新たに立て替えることになりました。
この住宅は、かって私がUさん家族のために設計した住宅ですし、私にとっては、建築を
志してから自ら設計した建物を解体する初めての体験です。
福岡市の中心部に近い丘陵地に植物園があり、敷地は植物園のそばの南面する三角形状の傾斜地です。
以前の住宅は斜面をそのまま利用し、段上の敷地の下部分には土留めの擁壁を兼ねた
コンクリート製の高基礎を壁にした木造の部屋と、その上部には4LDKの木造平屋を
乗せた合計45坪の住宅を建てていました。その住み手は変わらず、30年の間には、
キッチンや浴室の改修などを経験しましたが、Uさん家族により大事に住まわれて
来ました。Uさんも定年退職を迎えられ、新たなサード・ステージの生活を始めるに当たり、
以前の住宅を新たにバリアーフリーのシンプルな現代的仕様の住まいに立て替えることになりました。
基礎を兼ねた頑丈な既存のコンクリートの擁壁はそのまま今回の基礎として残し、
玄関へのアプローチと駐車場として利用し、前面にコンクリートの柱を追加して
その上に新たにシンプルな40坪の木造の平屋住宅を乗せました。
一種のビフォー・アフター的性格も持ち合わせています。住み手として思い出多いいくつかの
既存の要素や器具、材料を再利用しつつ、新たに取り入れたエレベーターとすべての部屋を
大きな引き戸で回遊式につなぎ、床をバリアーフリーにすることはもちろん、高い天井の居間、
地熱利用の全室床暖房や土漆喰の内壁の採用など、私が今までの住まい計画で研究してきた
あらゆる要素を思い返して計画の中に取り入れることを考えました。