建物には、そのものに与えられたテーマが存在します。
そのテーマを掘り下げ、そこにおいて象徴されるべきものを
見つけることこそ〝建築の良否〟につながるのです。
たとえば、住宅にとって、家族とは永遠のテーマです。
個々の家族が各々異なった解答を持っており、
既成の形に合わせるのではなく、
家族のあり方が計画に反映されるべきものです。
十年後程度の家族の構成、ライフサイクルを考え、
コミュニケーションとプライバシーの可能な平面(間取り)を検討します。
住宅という空間が精神生活にも大きく影響するという由縁がここにあります。
ほとんどの建築にわたって言えることは、
住まいの居間に対する考えが出発点になることです。
オフィス、教会、幼稚園、美術館等すべてにとって、
居心地の良い、暖かみのある空間をつくることが重要です。
健康な住宅を目指す時、自然の光をさんさんと浴びる明るい窓と、
それを通して入る気持ちの良い風の流れをつくることは必須条件ですが、
そのためにも昔ながらの知恵を現代の技術で再利用、再復活することにより、
日ごと、季節ごとに微妙に変化する感触、色、質感、陰影を通して、
奥行きのある立体的な、そして感動を与える空間が出来上がります。
地球規模の資源を考えるとき、建物の消費エネルギーを抑えることにより、
新たなエネルギーの創生を小さくできます。
資材も需給のバランスのとれた使用方法を考えれば、
永続的な利用が可能です。
そのためにも、木、竹、土をはじめとする
飽きのこない自然の素材を多用したいものです。
例えば、土壁は室内の湿度を調整する機能があり、
空気中の水分が多すぎるときは吸収し、乾燥しすぎるときは
吸収した水分を放出して、快適な湿度の状態にします。
また、断熱性、吸音性、吸匂性もあります。
木や竹も用途を心得て利用すれば、
ふんだんにあり、創生のリサイクルが可能な
素晴らしい自然の素材と言えます。